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成人T細胞白血病・リンパ腫における免疫表現型および其の臨床病理学的意義に関する包括的研究
大学院医学研究科 腫瘍病理学講座  病院 病理診断科
玉城 智子、和田 直樹タマキ トモコ、ワダ ナオキ
博士 (医学)[玉城 智子、和田 直樹]
専門分野・研究分野等悪性リンパ腫
研究シーズの内容

~A Comprehensive Study of the Immunophenotype and its Clinicopathological Significance in Adult T-cell~

 

成人T細胞白血病・リンパ腫(ATLL)はHTLV-1による成熟T細胞腫瘍である。典型的なATLLの免疫表現型は, 2017年のWHO分類において次の通り記載されている(陽性:CD2, CD3, CD5, CD4, CD25, 陰性:CD7, CD8, 細胞傷害性マーカー, 部分陽性:CD30, CCR4, FOXP3)。しかし, これらのマーカーだけでなく, これらのマーカーを含め多種多様なマーカーの発現解析に関する包括的研究は少なく, 腫瘍細胞における其々のマーカーの陽性割合に関する知見も乏しい。さらに, Th1マーカー(T-bet, CXCR3), Th2マーカー(GATA3, CCR4), T濾胞ヘルパー(TFH)マーカー(BCL6, PD1, ICOS), T細胞受容体(TCR)マーカー(TCR-β, TCR-δ)などT細胞リンパ腫に関連するノベルマーカーの発現とその臨床病理学的意義は明らかでない。本研究では, ATLLの包括的な免疫表現型を明らかにするため, 117例のATLLに対して21種類の免疫組織化学染色を実施した。ATLLの包括的な免疫表現型と, 形態学的バリアント(pleomorphic type vs. anaplastic type), 生検部位, 治療の有無, 下山分類, 全生存期間などの臨床病理学的因子を比較した。
CD3+/CD4+/CD25+/CCR4+はATLLの典型的な免疫表現型と考えられたが, 約20%の症例はこのパターンに当てはまらないことが判明した。他, 次の新しい知見が得られた。(1) 大多数の症例がTCR-β, TCR-δともに陰性(104例, 88.9%)であり, 他のT細胞腫瘍との鑑別を行う上でTCR発現陰性化の有用な可能性が示唆された。(2) CD30・CD15陽性, FOXP3・CD3陰性はanaplastic typeと有意に相関していた。(3) TFHマーカー陽性例(12例, 10.3%)や細胞傷害性マーカー陽性例(3例, 2.6%)などの非典型例が存在することが確認された。本研究の結果は, ATLLの表現型の多様性を示している。HTLV-1キャリアに発生したT細胞腫瘍では, 非典型的な表現型を示す場合でもATLLの可能性を除外すべきではなく, 組織中のHTLV-1を確認することが推奨される。

 

提供可能事項:免疫染色結果のデータ、統計解析結果のデータ

実用化イメージ

本研究において、CD30陽性はanaplastic typeと有意に相関していたが、CD30発現に関してanplastic typeに限定されてはいないことが判明した。このことから、抗CD30モノクローナル抗体剤を用いた治療が有用な症例を特定するためには、形態に関わらずCD30免疫染色が必要であることが示唆された。

関連する特許や論文等

 Mod Pathol. 2023 Aug;36(8):100169. doi: 10.1016/j.modpat.2023.100169. Epub 2023 Mar 29.

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